serendipity diary

Art, Books, Cinema, Dining and Entertainment

アンドリュー・ワイエス展 @東京都美術館

上野の東京都美術館で開催中の「アンドリュー・ワイエス展」を見に行きました。

wyeth2026.jp

20世紀アメリカ具象絵画を代表する画家アンドリュー・ワイエス。戦後、アートの中心がパリからニューヨークへ移るなか、抽象表現主義やポップアートの潮流には加わらず、自身の身近にある風景や人々を描き続けました。

アンドリュー・ワイエスの代表作といえば「クリスティーナの世界」でしょうか。

注)本作は今回の展覧会には出品されていません。

ニューヨーク近代美術館で何度も見たことがありますが、私はこれまで、荒涼とした風景のなかにたたずむ病弱な女性を描いた、どこか孤独で寂しい作品だと思っていました。

しかし今回の展覧会で、その見方が大きく変わりました。

ワイエスはクリスティーナを弱い存在としてではなく、病に屈することなく生きる強い存在として描いていたのです。彼女は数多くの作品に登場し、その姿からはワイエスの深い敬意と愛情が感じられました。

***

ワイエスが生涯描き続けたのは、ペンシルベニア州の自宅周辺と、メイン州の別荘周辺の風景。そして登場人物も近所の人々がほとんどです。

芸術家というと、何か特別な経験や劇的な人生が創作の源になるようなイメージがあります。しかしワイエスの作品を見ていると、本当に大切なものや創作の種は、案外すぐ身近なところにあるのだと気づかされます。

自画像 (Self-Portrait) 1945

展覧会の冒頭を飾る本作は、父と甥を事故で亡くした直後に描かれた作品です。悲しみというよりも、運命への怒りのような感情が伝わってくるように感じました。

洗濯物 (Light Wash) 1961

今回の展示では妻を直接描いた作品は見当たりませんでしたが、ワイエスは洗濯物や、妻が摘んだブルーベリーの入ったバケツなどを描くことで、その存在を間接的に表現していました。

雪の朝 (Snowy Morning) 1947

個人的に最も気に入った作品です。ワイエスは屋外を明るく、屋内を暗く描く作品が多いのですが、この作品ではまだ薄暗い冬の朝のため、屋外は暗く、室内には暖かな光が満ちています。

窓辺に飾られたクリスマスリースも印象的で、静かなぬくもりを感じました。

花びら (Petals) 1991

こちらも気に入った作品です。ペンシルベニアの自宅を描いています。2階の寝室の窓が開かれ、鳥のさえずりや風の音が聞こえてきそうな空気感がありました。

ワイエスの作品には死生観を感じさせるものが少なくありませんが、この作品の白い花には生命力が満ちていて、それゆえに特に心に残りました。

オルソン家の終焉 (End of Olsons) 1969

クリスティーナが亡くなった翌年に描かれた作品です。持ち主を失っても風景は変わらずそこにあり、思い出だけが静かに残り続ける。そんなメッセージを感じました。

ワイエス作品に何度も登場するこの家が、《クリスティーナの世界》の背景に描かれていた家だったことにも、今回初めて気が付きました。

***

ワイエスと親交のあったオルソン家の家屋は、現在も国定歴史建造物として保存されています

www.travlinmad.com

ワイエスの作品には油彩画はほとんどなく、水彩やテンペラを用い、ドライブラッシュと呼ばれる技法が多用されています。水彩画のなかには、日本画を思わせる繊細な表現もありました。

独特のスモーキーな色彩と静謐な空気感。そして身近な世界を深く見つめ続けた姿勢には、デンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイに通じるものを感じました。

沈黙の中に、ワイエスのモデルへの愛情や風景への愛着が息づいており、その創作の源泉に触れたような気持ちになりました。

LA STAZIONE DELLA PIZZA @自由が丘

これも4月のことですが、週末に自由が丘でランチをいただきました。いつも開店前からお客さんが並んでいて気になっていたイタリアンレストランです。予約をしていなかったので、開店時間に合わせて訪れました。

LA STAZIONE DELLA PIZZA(ラ スタツィオーネ デッラ ピッツァ)というこちらのお店は、ナポリピッツァの世界選手権で何度も受賞しているそうですが、活気あふれる雰囲気も魅力でした。

私たちは、2人前の前菜盛り合わせに加え、ピッツァとパスタを選べるコースをいただきました。

テーブルの上にセットされていたお皿は、厚手でぽってりとした素朴な質感。見ようによっては岡本太郎さんの現代アートのようにも見える、インパクトのある絵柄です。

まずはドリンクで乾杯。奥はイタリア産のビール、私は手前のシチリア産オーガニックレモンソーダをいただきました。すっきりとした飲み心地で、お料理にもよく合いました。

最初に運ばれてきたのは、フォカッチャと極薄のチーズ。チーズがおいしくて、おいしくて。おつまみ感覚で楽しみました。

続いて前菜の盛り合わせです。大きな絵皿に何種類もの前菜が並びます。生ハム、カルパッチョ、フリットなど、彩りも華やかでボリュームたっぷり。これだけでもおなかいっぱいになるほどで、大満足でした。

ピッツァはどれにしようか迷っていたのですが、「どのピッツァもハーフ&ハーフにできますよ」とうれしいお言葉をいただきました。

右の星形ピッツァは、絶対に食べたいと思っていた「Don Peppe(ドンペッペ)」というお店の看板ピッツァです。中央はマルゲリータで、星形の縁の部分にはサラミとリコッタチーズが入っています。

右側をトマトベースにしたので、左側はチーズベースに。自家製ソーセージときのこ、半熟たまごがのったビスマルクを選びました。

ピッツァの取り皿はレモン柄でした。彩りがさわやかで素敵です。もうひとつは赤と黒のムール貝柄でした。

パスタは、ムール貝やあさりがたっぷり入ったペスカトーレにしました。貝のうまみがしっかり染み込んだもちもちのパスタが、とてもおいしかったです。

スパイ・ゲーム

温かいお見舞いのメッセージをいただき、ありがとうございました。風邪はすっかり良くなりましたが、治るまでに二週間もかかってしまいました。クリニックを三か所も訪れ、最後に処方された抗生物質がようやく効いたようです。

熱も頭痛も鼻水もなく、ただ喉が腫れて声が出ないという症状だけ。気合いで仕事はなんとか乗り切りましたが、こんな風変わりな風邪をひいたのは生まれて初めてでした。話題の「謎の風邪」だったのかもしれません。

***

さて、これは風邪をひく前にAmazon Primeで観た作品。ブラッド・ピット&ロバート・レッドフォード主演のスパイ映画ということで、軽い気持ちで観始めましたが、予想以上に見応えのある硬派な作品でした。とてもおもしろかったです!

スパイ・ゲーム Spy Game 2001

実はこれまで、私はブラッド・ピットのことをただのハンサムな俳優だと思っていました。もちろん演技力があり、社会活動にも熱心なことは知っていましたが、その美しさゆえに、どこか厳しめに見ていたのかもしれません。

でも本作を観て、すっかり彼の魅力に目覚めました。(遅いよ!という声が聞こえてきそうですが)彼の出演作の中で、この作品が一番のお気に入りになりました。

***

ある目的のため中国の刑務所に潜入したCIA工作員ビショップは、中国当局に見つかり逮捕されてしまいます。一方、アメリカのCIA本部で引退前最後の日を迎えていたミュアーは、そのニュースを知ります。

ビショップは、かつてミュアー自身がスカウトし、長年かけて育て上げた特別な部下でした。

CIAがビショップを見捨てるつもりでいることを知ったミュアーは、自分の持つ知識、情報、経験、コネクション、さらには退職後のために蓄えていた財産までも投げ打ち、彼を救い出すために動き始めます。

***

映画は、ミュアーのCIAでの最後の一日と、ビショップとの過去の出来事を交錯させながら進んでいきます。

ミュアーは、国家を守るためなら人の命さえ切り捨てることを厭わない、徹底してドライな人物です。そんなミュアーのやり方に時に反発し、やりきれなさを抱えながらも、ビショップは最後には彼の方針に従ってきました。

***

ビショップは、戦時下のベトナム、冷戦下のベルリン、そして争乱の中東で、常に危険と隣り合わせの任務を遂行してきました。

彼をそこまで突き動かしているものは何なのか。愛国心というよりも、極限状態に身を置くことで、自分が生きていることを確認したいのではないか。そんなふうにさえ感じました。

誰にも機密を打ち明けられず、これでは家族を持つことも恋愛をすることも難しいのではないか。なんてむなしい人生なのだろうと思っていたら、さすがビショップ、中東で人道活動をしている女性としっかり恋に落ちていました。^^

ところが、その女性もまた、人道活動を表の顔としながら、活動を成り立たせるために裏では危険な任務に関わっていたのでした。

***

私は、ビショップの持つ青くささにとても惹かれます。私自身も、いつまでもそういう気持ちを失わずにいたいと思っているからかもしれません。

そして、ビショップの魅力が、そのままブラッド・ピット自身の魅力にも重なって見えました。

一方で、ドライな生き方を貫いてきたミュアーも、そんなビショップがかわいくて仕方がなかったのではないでしょうか。ひょっとするとミュアーは、ビショップの中に若き日の自分自身を重ねて見ていたのではないか。そんなことを思いました。

花ズッキーニを使って

先週はひどい風邪をひいてしまい、水曜日からはほとんど声が出なくなってしまったのにもかかわらず、仕事を休まずにいました。昨日は一日寝て、だいぶ楽になりましたが、まだ声の調子がもどらず...今回の風邪はなかなか手強いです。

***

さて、先々週末はアークヒルズの「ヒルズマルシェ」に行ってきました。

www.arkhills.com

いつもお米がなくなるタイミングにでかけて、あわせて野菜などを買ってきます。近隣の農家さんの新鮮野菜が手に入るのを毎回楽しみにしていますが、今回はめずらしい花ズッキーニが入っていたので、思わず買ってきました。

花ズッキーニというのはズッキーニの花ですが、花が咲く時期が短いのでなかなか市場に出回らない貴重品です。小さな実のついていない雄花と、ついている雌花があり、今回はすべて雌花でしたが、実は緑と黄色の二色がありました。

下準備は意外と簡単で、花弁をやさしく開いて中のめしべ(雄花の場合はおしべ)を切り取るだけ。私は実の付け根のところもカットしました。

調理法としてよく知られているのはフリットで、私も前回はカッテージチーズを詰めてフリットにしましたが、オーブン焼きやサラダなど、幅広く使えます。

serendpt5.hatenablog.com

今回はまずはパスタにしてみました。

花と実は分けて、実は斜め切りに。にんにく、赤唐辛子、アンチョビ、ケイパー、ツナを炒めて、パスタのゆであがり際に花を入れ、パスタ、少量の自家製トマトソースで仕上げました。

これ、ズッキーニの実も花も、めっちゃいい仕事をしていて、すごくおいしかったです。花が今ひとつ目立たないのが残念ですが、お気に入りのパスタになりました。

花ズッキーニはたくさんあったので、残りは次の日に肉巻きにしてみました。

しゃぶしゃぶ用の豚バラ肉を花ズッキーニの実の部分にぐるぐる巻いて塩こしょう、軽く小麦粉をはたいて油をひかずに転がしながら焼くだけです。

食べる時にはポン酢醤油をディップして。このお料理も、ズッキーニのおいしさを丸ごと堪能できました。次回花ズッキーニが手に入ったら、せっかくの花を生かしてサラダにしてみようかな、と思っています。

***

マルシェでは、いつも新鮮なルッコラを置いているお店があって、行くとかならず2束買ってきます。葉っぱが元気で力強く、サラダにすると最高においしいです。

この日は、同じくマルシェで購入したしいたけ、しめじ、ブラウンマッシュルームをオリーブ油とにんにくで炒めて、ざく切りにしたルッコラとトマトとあわせてドレッシングであえました。

山盛りに作って全部残らずいただきました。

IL CAMPANELLO/HiO ICE CREAM/Tecona bagel @自由が丘

自由が丘の学園通りにあるイタリア料理レストラン「IL CAMPANELLO」でランチをいただきました。

テラスのある開放的な雰囲気の一軒家レストランです。この写真だと少し雑然として見えるかもしれませんが、店内にはイタリアの写真やポスターなどがところ狭しと飾られていて、オーナーのイタリア愛が感じられるお店でした。

選んだパスタにサラダとフォカッチャのつく、ランチのセットをいただきました。

野菜がみずみずしくて、とてもおいしかったです。前菜の盛り合わせは予約制とのことで、いただけなかったのが残念でした。

パスタはお店の定番のボロネーゼ、ラザニア、トマトベースの週替わりパスタ、オイルベースの週替わりパスタの4種類から選べます。

こちらはオイルベースの週替わりパスタで、確かチキンと野菜のパスタだったと思いますが、詳細は忘れてしまいました。

私は大好きなラザニアを選びました。ぐつぐつと熱々の状態で運ばれてきました。少しはみ出したパスタの部分がこんがり焼けていて、ぱりぱりとした食感も楽しめました。クリーミィなソースも絶品で、とてもおいしかったです。

***

食事のあとには、1階にあるイタリア、スペイン、ポルトガル、メキシコの食器を扱うインテリアショップ「グラナダ」に入りました。

厚手のぽってりとした風合いに、手描きの色鮮やかな絵柄が施された陶器は、どれも民芸品のような素朴さがあり、旅情をかき立てられます。今回は購入しませんでしたが、たまにはこういう食器で食事を楽しむのもいいですね。

***

その後は自由が丘の住宅街をぶらぶらと。途中で以前から気になっていたアイスクリーム屋さん「HiO ICE CREAM」に立ち寄りました。

無機質でモダンな店内は、まるで実験室のような雰囲気。アイスを作るスタッフの方々も白衣を着て作業しています。

この日は季節限定のいちごのアイスが4種類もあったので、その中から3種類選びました。いちごのシャーベット、いちごヨーグルト、あともうひとつはいちごミルクだったでしょうか。

どれもいちごの甘酸っぱさがぎゅっと濃縮されているようなおいしさ。最高でした。

***

このあとは、メイプルファームにあるベーグル専門店「Tecona bagel」へ。

自由が丘ではちょっとしたベーグルブームなのか、ベーグル専門店がいくつもオープンしています。メープルファームの中庭には椅子やテーブルが置かれていて、買ったベーグルをそのまま食べることもできます。

つやつや、ふっくらとしたベーグル!

Tecone bagel では、シンプルなベーグルは比較的少なく、クリームをはさんだものや、トッピングのあるものが多い印象でした。また、食感が「ふか」「もち」「むぎゅ」「なま」と4種類に分かれているのが楽しかったです。

私はふだん、シンプルなベーグルでサンドウィッチを作ってお弁当に持っていくことが多いので、できるだけシンプルなベーグルを選びました。黒糖、ドライクランベリー、あとひとつはくるみだったでしょうか...どれもおいしくいただきました。

ザ・クライアント 依頼人

Netflixで観た、スーザン・サランドン主演の法廷ドラマです。

ザ・クライアント 依頼人 The Client 1994

11歳の少年マークと弟のリッキーは、森の中で偶然、ある男が銃で自殺する場面に居合わせてしまいます。その男がマフィアの秘密を知る弁護士だったことから、マークは重要な目撃者として、警察からもマフィアからも追われる立場となってしまいます...。

法廷映画が好きなので、ひょっとしたら本作も以前観たことがあったかも?と思いましたが、どうやら初めて観る作品でした。

***

最初のうちは、マークが警察に本当のことを話さないのが不思議でしかたありませんでした。ずっと、「本当のことを話して守ってもらえばいいのに」と思いながら観ていたのです。

しかし、マークの家庭環境やこれまでの人生を考えると、彼は子どもの頃から弁護士や警察に良い印象を持っておらず、まったく信用していないのだということが、だんだんわかってきました。

***

実際、本作に登場する警察やFBI捜査官たちも、マークをうまく言いくるめて秘密を話させ、マフィアを逮捕することしか考えておらず、彼や家族を守る気なんてさらさらないように見えました。

そんな中、マークが1ドル札を握りしめて弁護を依頼したのが、スーザン・サランドン演じるレジーです。彼女自身も過去に深い傷を抱えていたからこそ、マークのことをどうしても放っておけなかったのでしょう。

***

レジーは決して経験豊富な弁護士ではありません。しかし、「巨悪に立ち向かう正義感」というよりも、「この子を守れるのは自分しかいない」という思いから、1ドルで弁護を引き受ける決意をしたのだと思います。

レジーの人間的な魅力に引き込まれました。演じたスーザン・サランドンもとてもかっこよかったです!

天ぷら 船橋屋 & Lady Gaga, Doechii "RUNWAY"

プラダを着た悪魔2」を観に行ったのは、新宿ピカデリー。ちょうど帰省していた息子も一緒だったので、映画の後に「天ぷら 船橋屋」でお昼をいただくことにしました。

カウンター席で目の前に揚げていただくのも好きですが、この日は三人だったので、会話のしやすいテーブル席に通していただきました。夫の好物であるかき揚げが入った天ぷらのコースをお願いしました。

巻海老二本に穴子、そしてアスパラガス。巻海老(マキエビ)は車海老の成長過程にある若い海老で、やや小ぶりながら甘みがあり、身もやわらかく、天ぷらに最適といわれています。

また車海老は、幼少期からサイマキ、マキ、チュウマキ、クルマエビと呼び名が変わることから、「出世海老」ともいわれる縁起の良い食材です。

魚介の天ぷらには、個人的にはすっきりとした天つゆが一番合うと思っていますが、野菜の天ぷらには気分を変えて、塩を少しつけていただくのも美味しいです。

なすに新玉ねぎ、そしてかき揚げ。かき揚げは夫の大好物ですが、この頃には私はすっかりお腹がいっぱいで、夫と息子に食べてもらいました。

ちょうど旬のしじみのお味噌汁も、味わい深く、とても美味しくいただきました。

***

さて、映画を観て以来、「プラダを着た悪魔2」のサウンドトラックをよく聴いていますが、その中でも特に気に入っているのが、主題歌ともいえるレディー・ガガとドーチ(ラップ)のコラボ曲です。


www.youtube.com

パワフルでエネルギッシュな世界観が際立つ、最高にかっこいい。”RUNWAY”というタイトルは、ミランダが編集長を務める雑誌の名前であると同時に、ファッションショーのランウェイとも重ねているのでしょうね。

聴いていると、リズムに乗って少し気取って歩いてみたくなります。レディー・ガガは、ほかにも今回の映画のためにいくつか楽曲を提供しているようです。

***

そして思い出すのが、前作「プラダを着た悪魔」に登場するマドンナの「Vogue」。今回のガガの楽曲とは、また違った魅力で好対照をなしているように思います。

ちなみにタイトルの「Vogue」は、ミランダのモデルとなったアナ・ウィンターが編集長を務める雑誌の名前でもあります。


www.youtube.com

何度も見返したくなる、大好きなシーンです。

テッドのフレンチトースト @クレイマー、クレイマー

映画「クレイマー、クレイマー」の名場面のひとつに、父親テッドが息子ビリーとフレンチトーストを作るシーンがあります。

serendpt5.hatenablog.com

私が印象的に覚えていたのは、テッドが食パンをコーヒーマグに押し込んで、不器用にフレンチトーストを作る場面でした。けれども今回あらためて見直してみて、このお料理のシーンが実は二度描かれていたことに気づきました。

まずは、映画の序盤に登場するシーン。


www.youtube.com

フレンチトーストがうまく作れず、いら立ちを隠せないテッド。その様子を、ビリーは不安と緊張の入り混じった表情で見つめています。

それから映画の終盤に登場するシーン。


www.youtube.com

序盤とは対照的に、テッドは落ち着いた手つきで手際よくフレンチトーストを作ります。ビリーも自然に手伝っていますが、その表情はどこか沈んでいます。これが二人で過ごす最後の朝だと、わかっているからです。

セリフはほとんどないにもかかわらず、二人が過ごした一年半の時間の重みが静かに伝わってきて、思わず涙があふれました。

***

そんな場面を思い出しながら、休日の朝にフレンチトーストを作りました。

食パンを卵液(卵・豆乳)に浸してフライパンで両面を焼き、バナナ、砕いたナッツ、ブラッドオレンジを添えました。

メイプルシロップをかけて、コーヒーといっしょにいただきました。プディングのようにやさしい甘さが、フルーツやナッツとよく合いました。

***

ところで、フレンチトーストといえば日本では食パンで作るのが一般的ですが、フランスでは本来、硬くなったバゲットを使い、パン・ペルデュ(失われたパン)」と呼ばれています。

この料理がフランス系移民によってアメリカに伝わる過程で、食パンを使う形に変わり、「フレンチトースト」という名前が定着したのではないかといわれています。そして日本には、アメリカ経由でこの呼び名と作り方が広まったのでしょう。

最近では日本でもバゲットを使った作り方や、パンペルデュという呼び名が定着しつつありますね。

***

ご存じの方もいるかと思いますが、アメリカではフライドポテトのことを「フレンチフライ」と呼びます。これもフランスの「ポム・フリット」に由来するとされています。

フレンチトーストもフレンチフライも、名前の中に“フレンチ”を残したまま、アメリカで独自のかたちに進化していったのだと思うと興味深いです。

プラダを着た悪魔2

大好きな映画「プラダを着た悪魔」の続編「プラダを着た悪魔2」(The Davil wears Prada 2)を早速観てきました。

前作から20年。携帯電話はあってもスマートフォンやSNSはなかった時代から、本格的なネット社会へ。出版業界も紙からオンラインへと舵を切らなければ生き残れない状況です。

本作の中でも、アンディが勤めていた硬派な出版社は倒産し、ミランダが率いるRUNWAYもネットでの炎上騒動から経営危機に直面します。時代の変化がストーリーにしっかり組み込まれ、リアリティがありました。

なお、原作には「プラダを着た悪魔 リベンジ!」(ローレン・ワイズバーガー 著)という続編小説があります。

私も出版当時すぐに読みましたが、小説版はアンディとエミリーが結婚情報誌を立ち上げるストーリー。本作はそれとは異なるオリジナルストーリーとなっています。

それにしても、アンディ、エミリー、そしてミランダが、20年経っても変わらず輝いているのはほんとうにすごい。

前作はアンディのがんばりと成長に励まされましたが、本作はミランダの成長物語となっている… と私は思いました。

あの傲慢だったミランダが、身の回りのことを自分でするようになり、最後には自分を周りの人たちに敬意と感謝のことばを口にできるようになっていたのは感慨深いものがありました。

また、RUNWAY編集部の雰囲気も大きく変化していました。

前作ではファッションモデルのようなスタッフばかりでしたが、今回は体型・人種・性別ともに多様で、どこかIT企業のような自由な雰囲気がありました。

RUNWAY存続の危機を救うのに、中国系の人物が鍵となっていたのにも、時代の流れを感じました。

ファッション面では、かつてキュートなハイファッションで身を固めていたアンディが、今回はジーンズやパンツなど、カジュアルでマニッシュなスタイルが多く、大人の装いとなっていました。

そんな中で印象に残ったのは、ミランダのハンプトンのセカンドハウスでのパーティで着ていたパッチワーク風のサマードレス。カジュアルな中にも華やかさがあって、別荘地での休日にぴったりでした。

前作とリンクする場面がちょこちょこあったのもファンにはうれしかったです。思わず「あっ!」と気づいて、にやにやしてしまうことも。

ラストでアンディが着ていたブルーのニットのベストには、前作で「おばあちゃんのスカート」と揶揄された初日のコーディネートを思い出しました。でも今回は、肩の力の抜けた洗練された装いに見えたのが不思議。

懐かしさと新しさが心地よく交差する一作。まさかのスペシャルゲストも登場し、うれしいサプライズでした。(^_-)-☆

クレイマー、クレイマー

Netflixで、1979年公開のヒューマンドラマ「クレイマー、クレイマー」(Kramer vs. Kramer) を見ました。

この作品は、かつてテレビ放映で見たことがありましたが、当時はまだ子供だったので、物語を十分に理解できていなかったような気がします。ただ、フレンチトーストを作る場面はよく覚えていました。

今回あらためて観てみて、この作品が紛れもない傑作であることを強く実感しました。これは、これまで子育てに関わってこなかったテッドが、息子と向き合っていく中で「父になる」までの物語。

ストーリーはまったく異なりますが、是枝監督の「そして父になる」は、本作から何らかの影響を受けているのではないかと、ふと感じました。音楽の使い方にも共通点がありました。

(本作ではヴィヴァルディのマンドリン協奏曲、「そして父になる」ではグレン・グールドによるバッハの「ゴルトベルク変奏曲」と、いずれもバロック音楽が効果的に用いられています。)

***

また、この作品には、女性の自立という当時の社会背景も反映されているように感じました。日本においては、本作の少し後、1986年の男女雇用機会均等法が一つの転機になってのではないかと思います。

実際、私の友人にも離婚経験者は少なくありません。経済力があり、子どもがいない場合や、すでに自立している場合には、離婚という選択のハードルが下がる側面もあるように感じています。

***

本作には、ジョアンナとマーガレットという、対照的な価値観を持つ二人の女性が登場します。家庭を支えることに喜びを見出すマーガレットに対し、テッドの妻ジョアンナは、家庭を優先したことで自分の望む生き方ができなかったと感じています。

どちらが正しいという問題ではなく、価値観の違いなのだと思います。印象的だったのは、テッドがジョアンナを一方的に責めるのではなく、「パパがママに理想を押し付けていた」と息子に話して聞かせる場面です。

私自身は、結婚とは神との契約のようなものだと考えているので、どちらかといえばマーガレットの考え方に近いです。それでも、この映画を観ると、単純に善悪で割り切れる問題ではないと改めて感じます。

***

そしてもう一つ、個人的に重なる点がありました。実は私も、ビリーの部屋と同じように、息子の子ども部屋に雲の壁紙を貼っていたことがあるのです。

(その後すぐにアメリカへ引っ越し、帰国した頃には息子も成長していたため、壁紙は結局普通のものに変えてしまったのですが)

ラストでジョアンナが、「ビリーのいるべき場所は、あの雲の部屋のあるここなの」と泣き出す場面で、私もジョアンナの気持ちに寄り添い、涙してしまいました。