serendipity diary

Art, Books, Cinema, Dining and Entertainment

印象派 室内をめぐる物語 @国立西洋美術館

チケットをいただき、上野の国立西洋美術館で開催中の「印象派 室内をめぐる物語」展を鑑賞してきました。

www.orsay2025.jp

かなり混雑していたこともあり、あまり落ち着いて見ることはできませんでしたが、その分、大作を中心にじっくりと鑑賞しました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ピアノを弾く少女たち》 1892年
油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ

私が特に楽しみにしていたのは、本展のメインビジュアルにもなっている上の作品です。オルセー美術館でも見たことがありますが、中学時代、教室に複製ポスターが飾られており、当時から大好きな作品でした。

同級生から「奥の少女に似ている」と言われたことがあり、当時はあまりうれしくなかったのですが、その言葉はその後、宝物のように心の中に残り続けています。言った本人は、きっと覚えていないと思いますが。^^

フレデリック・バジール《バジールのアトリエ(ラ・コンダミンヌ通り)》1870年
油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ

ジールという画家も、この作品も、初めて知りましたが、ひと目で心を奪われました。”絵画の中に絵画が描かれている”構図が好き、ということもあるのかもしれません。

中央に見えるのは、画家と画商、そして依頼主でしょうか。作品を眺めていると、自然とストーリーが浮かんできます。映画のワンシーンのような動きのある構図が楽しく、室内に描かれている調度品の数々も興味深く鑑賞しました。

エドゥアール・マネエミール・ゾラ》 1868年
油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ

こちらもまた、物語性を強く感じる作品です。印象派の画家たちが日本の浮世絵から影響を受けていたことはよく知られていますが、実際にこのような形で絵画の中に登場すると、思わずうれしくなってしまいます。

右奥には、マネの「オランピア」の複製画も見えます。現在では、美術展のおみやげとして定番となっている小さな複製画ですが、当時からこのようなものが存在していたのでしょうか。

アルベール・バルトロメ 《温室の中で》 1881年
油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ

バルトロメという画家も初めて知りましたが、このドレスを見て、ルノワールの「ぶらんこ」を思い出しました。

ja.wikipedia.org

モデルが実際に着用していたドレスもあわせて展示されていましたが、そのことでこの絵画が一気にリアリティを帯びてきて、深い感動を覚えました。

クロード・モネ 《睡蓮》 1916年
油彩/カンヴァス 国立西洋美術館(松方コレクション)

国立西洋美術館の所蔵作品の中で、もしかすると一番好きな作品かもしれません。本作は室内画ではありませんが、室内を装飾するための作品として展示されていました。いつ見ても心が安らぎ、同時にときめきを与えてくれる一作です。

佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方) @横浜美術館

先月、帰省していた息子といっしょに、横浜美術館で開催中の「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」を見に行ってきました。

佐藤雅彦さんと聞いてもピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、あのNHKの名作番組「ピタゴラスイッチ」を手がけた方です。

私はそれまで佐藤さんのことをよく存じ上げなかったのですが、もとは電通のCMクリエイターの方だったと今回初めて知りました。

私は「ピタゴラスイッチ」の「AならばB」「BならばC」という論理のつながりに、数学のおもしろさに通じるものを感じていたので、佐藤さんが教育学部の数学科出身と伺って深く納得しました。

本展は佐藤雅彦さんのこれまでのお仕事を振り返るもので、CMクリエイター時代の作品も数多く紹介されていました。

バザールでござーる」や「ドンタコス」も佐藤さんの作品だったのですね! 一度聞いたら忘れられない強烈なインパクトがあります。

CMコピーというと感覚的に作られていると思われがちですが、実際には綿密な思考のアルゴリズムと論理的なルールに基づいて構築されていることが伝わってきて、とても興味深かったです。

私が懐かしかったのは、サントリー「ピコー」のCMです。英国の由緒正しき紅茶文化の雰囲気と、「マザーグースの歌」を思わせるメロディやリズムが楽しくて大好きでした。これも「本格的な紅茶」を演出するための工夫だったのですね。


www.youtube.com

実際には存在しない「架空の広告を作ってみた」というコーナーもおもしろかったです。

これはミネラル・ウォーターのペットボトルをビルの給水塔に見立てたものですが、どことなくエドワード・ホッパーの世界を思わせる静けさと孤独が感じられ、心惹かれました。

***

そしてやはり、佐藤さんといえば「ピタゴラスイッチ」。会場では3つのピタゴラ装置の実物セットと、それを動かした映像が大画面で紹介されていましたが、目が離せないくらいに見入ってしまいました。

そして私の心を最もとらえたのは、佐藤さんが幼い頃から集め続けてきたというコレクションです。

佐藤さんは、お菓子の空き缶や外国の文房具など、心に留まったものを大切に集めていたそうです。もちろんその頃は「ピタゴラスイッチ」を作るなど思いもしなかったとのこと。

それらが大人になってからの作品づくりの道具となったというエピソードには、まさにセレンディピティを感じて心を打たれました。

そのほか、数学クイズのコーナーも楽しかったです。夏休み期間に合わせて開催されていたため一見子ども向けかと思いきや、大人こそが夢中になって楽しめる展覧会でした。

山形旅行記(2024・秋)夜の銀山温泉 & 挾土秀平さんの鏝絵

山形旅行記の続きです。これまでの記事はこちら。

1.山形旅行記(2024・秋)天空の古刹 山寺へ
2.山形旅行記(2024・秋)芭蕉茶屋 & 垂水遺跡
3.山形旅行記(2024・秋)銀山温泉へ

夕食後に外へ出ると、ちょうど夕食時だったためか、観光客の姿はほとんどなく、皆さん宿でくつろいでいらっしゃるのでしょう。しばし静かな雰囲気の中、散策を楽しむことができました。

少し角度を変えて。

しかし間もなく、花笠音頭の催しと、きのこ汁のふるまいがあるとのことで、各旅館から観光客が次々と集まってきました。

花笠音頭の会場は、私たちが宿泊した「昭和館」の前の橋。私たちは、その隣の橋の上から見物しました。橋の上には足湯もあり、湯につかりながら踊りを楽しむ方々もいらっしゃいました。

花笠音頭は、銀山温泉のある山形県尾花沢市の民謡だとか。ところが夫によれば、彼が通っていた東京の小学校でも、毎年運動会で花笠音頭を踊っていたそうです。どういう経緯かはわかりませんが、おもしろいですね。

この日は、花笠音頭のほかに(私たちはいただきませんでしたが)きのこ汁もふるまわれ、また最後には「きのこの盛り合わせ」が当たる抽選会もあり、大いに盛り上がりました。

翌朝のお宿の朝食です。籠盛りのお料理が美しく、ヨーグルトがあったのもうれしかったです。ごはんは、山形の名産・紅花といっしょに炊き上げた「べにはなご飯」。薄黄色が美しく、繊細な味わいでした。

ところで、「昭和館」のお食事処の壁は、洞爺湖サミット会場やNHK大河ドラマ真田丸」の題字を手掛けたことで知られる左官職人、挾土秀平 (はさど しゅうへい) さんによるもので、鏝絵(こてえ) も施されています。

下の埋め込みをクリックすると、昭和館の作品がご覧いただけます。

www.syuhei.jp

この地域の四季折々の風景が描かれているとのことですが、洗練されたデザインがとてもすてきでした。

また、廊下にも挾土さんの作品がありました。

思いがけず芸術に触れることができ、心に残る滞在となりました。

月百姿×百段階段 @ホテル雅叙園東京

チケットを持っている友人に誘っていただき、目黒のホテル雅叙園東京で開催されている「月百姿×百段階段 ~五感で愉しむ月めぐり~」を見に行ってきました。

かつて「目黒雅叙園」と呼ばれていたこのホテルは、いつの間にか名前が変わっていました。雅叙園には何度か訪れたことがあるのですが、実はその豪華絢爛な雰囲気が少し苦手でもあり、しばらく足が遠のいていました。

百段階段については、名前は知っていましたが、実際に目にするのは今回が初めてです。派手な雛壇のような階段を想像していましたが、老舗旅館を思わせる風格のある階段で、見応えがありました。階段の途中途中に踊り場があり、それぞれが七つの広間へとつながっています。

雅叙園は料亭として開業し、日本で最初の結婚式場としても知られています。当時としては珍しく、日本料理だけでなく中国料理も提供されていたそうで、中国料理店でよく見られる円卓のターンテーブルを考案したのも雅叙園だそうです。

そういえば昔、仕事でお世話になった先輩が雅叙園で結婚式を挙げ、その時も披露宴で中国料理がふるまわれたことを懐かしく思い出しました。

前置きが長くなりましたが、今回の催し「月百姿×百段階段」では、独特の装飾が施された七つの広間を巡り、月を題材にした浮世絵や工芸品、現代アートインスタレーションを鑑賞しました。

全体に刺繍が施された豪華なお着物。

自然の素材で染められた衣装や反物。和紙を用いた月のオブジェ。

ススキ野原をイメージしたインスタレーション

円卓を配した中国風のお部屋。

四季折々の植物や果物が描かれたお部屋。ボタニカルアートのような風情があり、このお部屋の装飾が特に気に入りました。和紙を使った現代アートとのコラボレーションも素敵でした。

鏑木清方による欄間画を見ることができたのも収穫でした。

DIC川村記念美術館

千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館に行ってきました。

この美術館は、DIC株式会社(旧・大日本インキ化学工業株式会社)の創業家である川村家三代が収集した美術品を展示しており、佐倉市郊外の森に広がる同社の研究所と同じ敷地内にあります。

美しい庭園に囲まれたこの美術館は、現代美術のすばらしいコレクションでも知られており、以前から訪れたいと思っていたのですが、東京から車で約1時間と少し距離があるため、なかなか足を運べずにいました。

この夏、突然同美術館が2025年1月末で休館することが発表され、慌てて訪れたという次第です。なお、休館の発表後、来場者が急増し、そのため休館開始は2025年3月末まで延長されたそうです。

エントランスを抜けて森の小径を進むと

視界が開け、美しい芝生と噴水のある池の風景が広がります。

写真で何度も目にしてきたこの美術館は、「ヨーロッパのワインセラーのよう」と形容されることが多いですが、私自身は密かに「ムーミンの家」と呼んでいました。設計は建築家・海老原一郎氏で、DIC二代目社長の旧制中学時代の同級生だそうです。

館内のコレクションは20世紀美術が中心ですが、それぞれの展示室が多彩なコレクションの特徴に合わせて設計されており、作品が最も映える環境で鑑賞できるような工夫が施されています。

マーク・ロスコの「シーグラム壁画」シリーズの7点が一堂に並ぶ展示室。作品に合わせて照明はやや暗くされ、まるで洞窟の壁画に向き合っているかのような感覚にとらわれました。

「西川勝人 静寂の響き」という企画展も開催されていました。西川勝人さんの作品を今回初めて知りましたが、白を基調としたさまざまな作品やインスタレーションが、心にそっと語りかけるような優しさと清らかさにあふれていて、深く感銘を受けました。

写真にある24枚組の「静物」という作品は、以前山梨県立美術館で見た栗田宏一さんの土のアートを思い出させました。

館内での鑑賞を終えた後は、広大な庭園を散策しました。自然散策路を進んでいくと、その先には広場が広がっていました。

広場の周囲には桜の木が並んでおり、春にはお花見を楽しむ人たちで賑わうことだろうな、と想像しました。庭園はチケットがなくても入れるエリアで、テニスコートなどもあり、地域の憩いの場として親しまれているようでした。

広場の中央にはヘンリー・ムーアのブロンズ彫刻が堂々たる存在感を見せていました。

気持ちのよいテラスもあり、休憩スペースとして利用できます。

紫陽花がきれいな色を保ったままドライフラワーになっていました。

かわいらしい赤い実。

お花の少ない時期ですが、ところどころで可憐な花々に出会えました。

池では白鳥の夫婦がのんびりと。のどかな風景が広がっていました。

(次の記事に続きます。)

近代の日本画展 @五島美術館

招待券を持っている友人が誘ってくれて、いっしょに世田谷区上野毛にある五島美術館に行ってきました。

[館蔵] 近代の日本画展(6月16日まで開催)

五島美術館は、東急電鉄の創業者である五島慶太氏が、事業のかたわら自ら蒐集してきた古文書や日本画などの貴重な美術品の数々を収蔵、公開している美術館です。以前から訪れたいと思っていたので、思いがけないうれしい機会となりました。

そして本展のテーマは、私の好きな近代日本画。館蔵の近代日本画コレクションから、花鳥画を中心とした約40点を鑑賞しました。この他、古文書、古記録、墨・硯など、貴重な歴史資料も見ることができました。

游鶴図 橋本雅邦筆 明治29年(1896)頃

鴨鷄図 川端玉章筆 明治時代・20世紀

啄木 小杉放菴筆 昭和時代・20世紀

葉っぱが葉脈まで精密に描き込まれていて、まるでボタニカルアートのようでした。

紅梅 山口蓬春筆 昭和30(1955)年

冨貴盤 川端龍子筆 昭和21(1946)年

今回、私が一番気に入った作品です。大好きな芍薬の花が大胆に描かれていて、西洋画のような華やかさがありました。

館内で作品を鑑賞した後は、そのままお庭に出られます。高低差のある地形を生かした広大な庭園には、古墳、2つのお茶室、菖蒲池などあり、変化に富んで散策が楽しめました。

皇太子様(現天皇陛下でしょうか)によるお手植えの松

すぐ近くに二子玉川の街。天気がよいと遠くに富士山が見えるそうです。

赤門と、ユーモラスな表情の石仏。

庭園を出ると、二子玉川までは歩いてすぐ。週末の二子玉川はファミリーで大賑わいですが、ようやく中華のお店に空きを見つけて、ランチをいただきながらおしゃべりを楽しみました。

マティス 自由なフォルム @国立新美術館

招待券をいただいて、乃木坂の国立新美術館で開催中の「マティス 自由なフォルム」展に行ってまいりました。

ポスターのメインビジュアルは「ブルーヌードIV」(1952) 。オルセー美術館所蔵、マティスの切り絵の代表的作品です。肉体賛歌を感じる、私も大好きな作品です。今回の美術展ではニースのマティス美術館が所蔵する作品が多く展示されていました。

マティス展は、思えば昨年の夏に行ったばかりですが

【過去記事】マティス展 (2023-08-02)

今回は特に、舞台衣装やタペストリーの数々が心に残りました。また、前回映像で見たヴァンスのロザリオ礼拝堂を、再現展示で体感できたのも楽しかったです。絵画のみならず、総合芸術家としてのマティスの魅力を堪能しました。

これはマティスの作品ではなく、マティスの所有品で「赤いムシャラビエ」というタイトルの北インドタペストリーです。ムシャラビエというのはアラブの格子出窓だそうですが、刺繍とアップリケが施され、透かし模様の入った手の込んだものでした。

エキゾチックな赤色がいかにもマティス好み。このタペストリーが背景に描かれたマティスの作品「小さなピアニスト、青い服」(1924) と並んで展示されているのも、おもしろい趣向でした。

ストラヴィンスキーが作曲したモダンバレエ「ナイチンゲールの夜」が1920年にパリで初演された時、マティスが美術と衣装を担当しました。クラシックバレエとはひと味違う衣装が斬新。バレエの映像も迫力があって、興味深かったです。

ポリネシア、海」(1964)  1964年のマティスの切り絵をもとにしたタペストリーです。

ここから先の展示室は写真撮影可となっていました。

「花と果実」(1952-53) 写真だとお伝えしにくいですが、5枚のキャンバスを並べた大型の作品です。果実はどこに? 中央の左寄りに、オレンジ3つが3組描かれています。

テラコッタのタイルが12枚並べてあります。どれもマティスらしいカラフルな切り絵のモチーフです。ワカメ?のように見えるのは「パルメット」というヤシの文様のようです。

「蜜蜂」(1948) こういう幾何学的な作品、好きです。蜜蜂はどこに? おそらく白と黒の四角で構成されているのが蜜蜂を表しているのだと思います。

前回のマティス展と同様、ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する展示です。マティスは礼拝堂の調度品だけでなく、司祭服一式もデザインしました。色違いで6種あり、こちらは白地の司祭服一式です。海藻類のフォルムがデザインされているということです。

フィナーレを飾るのは、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の再現展示です。前回のマティス展で見た映像が、立体的に再現され、臨場感をもって体感することができました。

ライティングで、朝から昼、夕方、そして夜へと日光の移り変わりが表現され、真っ白な礼拝堂内に反射する、青と黄色のステンドグラスの模様がとてもきれいでした。

HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美

年末に、三鷹市美術ギャラリーで開催されている「HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美」展に行ってまいりました。

はいばら(榛原)さんは文化三年(1806年)日本橋に創業した和紙の老舗です。私ははいばらさんの千代紙やレターセットが大好きで、長く愛用してきました。

【過去記事】はいばらさんでお買い物 (2010-04-19)

この頃は永代通りにお店がありましたが、その後再開発でお店が入っていたビルが建替えとなり、今は中央通りに、漆黒の超モダンなファサードの店舗を構えていらっしゃいます。

本展では主に、明治から昭和初期にかけて榛原さんと交流があった、河鍋暁斎川端玉章竹久夢二などの美術家たちが手がけた華麗な千代紙や、美しい絵柄の封筒や便箋などの作品の数々が紹介されていました。

ポスターにある千代紙の柄は、河鍋暁斎の「長陽」。私もこの柄の蛇腹便箋のレターセットを愛用しています。

仕事で外国の方に御礼を差し上げる際には、いつもこの封筒を使っています。便箋は蛇腹折りになっていて、巻紙のように手紙の長さにあわせて切って使えるのがユニークです。

***

本展では、華やかで愛らしい多色刷りの千代紙の数々に目を奪われました。

河鍋暁斎「牡丹」

川端玉章「貝合わせ」

八重菊

美しい絵短冊や絵封筒、お正月らしいぽち袋には楽しい絵柄もありました。

長野草風「絵短冊(十二ヶ月絵短冊・部分)」

絵封筒(洋風絵封筒

一足早く、お正月気分を満喫しました。

三都ガラス物語 @箱根ガラスの森美術館

箱根ガラスの森美術館の続きです。館内には2つの美術館があります。まずは、ヴェネチアン・グラス美術館で開催中の企画展を見ました。

ヴェネチア、プラハ、パリ 三都ガラス物語 ~歴史を駆け抜けた華麗なるガラスの世界~

15分のガイドツアーに参加しましたが、これがとてもよかったです。作品にはそれぞれ詳しい説明書きがついていて、解説映像も流れていますが、ガイドの方のお話が興味深く、見どころを押さえて鑑賞することができました。

エンジェル文蓋付ゴブレット(バカラ)1870-1910年頃
天使の模様がついた愛らしいグラス。

レース・グラス・コンポート(ヴェネチア)17世紀初
ヴェネチアングラスの初期の作品です。初期の頃は、透明と白いグラスを層状に重ね、ひねることによってレース模様を作り出す技法が多く使われたそうです。

美術館のドーム型の天井には優美なシャンデリア。

天使鹿文蓋付ダブルゴブレット(ボヘミア)18世紀
ボヘミアン・グラスというと、厚手のカットグラスが思い浮かびますが、こんなに繊細なグラスもあるのですね。淡いピンクが愛らしく、私は一番気に入りました。

エンジェル装飾台座付鉢 BAMBOUS TOUS(バカラ)1890年頃
天使の装飾を施した金属と組み合わせた美しい鉢。

アイリス文花器一対(バカラ)1900年頃
アール・ヌーヴォー全盛期に開催されたパリ万博に出品された作品。

金彩竹文花器一対(バカラ1878年
竹のデザインが施され、19世紀後半のヨーロッパで流行したジャポニズムの影響が見て取れる作品です。

クリスマスにあわせて、ヴェネチアン・グラスのイエスの降誕セットが展示されていました。

ヴェネチアン・グラス美術館でクラシックでゴージャスなグラスの数々を鑑賞した後は、ガラスのローズガーデンを通って、隣接する現代ガラス美術館へ。

最初に見たのは、イタリアのリヴィオ・セグーゾさんという現代グラスアーティスの作品の数々。透明ガラスを組み合わせたシンプルで洗練された作品でした。

デイリ・チフーリさんという、アメリカ出身ヴェネチアに留学したというグラスアーティストの作品の数々。海の生物を思わせるカラフルで幻想的な作品でした。

庭園にもさまざまなガラスのアートが展示されています。上は芝生の上に無造作に置かれたガラスの風船。

日が暮れると明かりが灯り、これもまた幻想的な美しさでした。

長くなりましたが、クリスマスイルミネーションに続きます。

デイヴィッド・ホックニー展

招待券をいただいて、東京都現代美術館で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」を見に行ってまいりました。

イギリス出身の現代の画家、デイヴィッド・ホックニーの大規模個展です。

本展では、イギリス各地やロサンゼルスで制作された代表作の数々のほか、近年制作された風景画の「春の到来」シリーズ、コロナ禍のロックダウン中に、iPadを使って描いたという実験的作品など、約120点が展示されています。

ポップで明るい代表作品の数々のほか、あっと驚く表現手法で制作された大型の作品など、どれも好奇心を刺激して楽しめました。ポスターに描かれているのは「春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年」の一部ですが、この作品

全体は、32枚のカンヴァスを組み合わせた、幅10m × 高さ3.5m という大型の油彩画です。そもそもカンヴァスを組み合わせて大きな作品を作る、という発想にびっくり。運ぶ時は分けて梱包し、展示先で並べればよいのですから合理的ですね。

No. 118、2020年3月16日「春の到来 2020年」より

展示室に入って最初に出迎えてくれたのがこの作品です。2020年の春といえば、ちょうどコロナが広がり始めた頃ですが、それを微塵と感じさせない明るさに心が洗われました。そういえば、私もコロナで家に4日間籠城?した後に目にした春の花々に

心を洗われたことを思い出しました。(コチラの記事) 水仙の葉の重なり合いは、近くで見ると尾形光琳の「燕子花図屏風」を思い起こしました。

「自画像、2021年12月10日」

そしてこちらが自画像。おしゃれで、お茶目なおじさまですね。エルトン・ジョンにもちょっぴり似ているような...。

スプリンクラー」 1967

しゅんしゅんと回るお庭のスプリンクラーアメリカ時代の懐かしい思い出ですが、家の作りは窓が大きい西海岸スタイルです。バービーランドのようなどこか作り物めいた風景が、いかにもアメリカらしい。

2022年6月25日、「額に入った」花を見る

画面で見ると小さいですが、約5.2m × 3m ある大きな作品です。絵の中に額縁の絵というと、私はマティスを思い浮かべますが、これだけ並ぶと圧巻です。

「ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作」 2007

こちらも約5m × 12m の大きな作品ですが、縦5枚、横10枚、なんと50枚のカンヴァスを組み合わせているのです。メイキング動画がギャラリーで公開されていました。

Making Bigger Trees near Warter, 2007

ラストは、コロナ下に iPad で描いた絵画をつなぎあわせて構成した全長 90m の作品です。

「ノルマンディの12ヶ月」(部分) 2020-21年

広いギャラリーに帯となって続く壮大な絵巻に圧倒されました。(写真撮影ができました)

2019年にコロナを逃れてフランス、ノルマンディ地方に移り住んだホックニーは、世界中の都市がひっそりと静まり返っている間、周辺の自然や季節の移ろいを見つめ続けました。そこには、かけがえのない豊かな風景が広がっていました。

それにしても、こんな風に iPad でちゃちゃっと (ではないかもしれませんが) 身近な風景や旅先の景色が描けたらどんなに楽しいでしょう。御年80歳を越えるおじいちゃまに、危機を乗り越える力、新しいものにチャレンジする意欲を学びました。